2020年2月17日月曜日

消失点を理屈で決める

パースで最初に悩むポイントの一つに、「二点透視の二つの消失点をどこにするか」があるかと思います。

消失点は、基本的にはラフを描いて、それを基準に決めます。逆の、「ラフ→消失点」の順で、消失点から決めてしまうのはあまり良くない。

ですが、一応「消失点を先に決める」ための理屈、の様なものはあります。
参考までにお読みください。


1
コマ(フレーム)の中心から縦に線を引きます。
つぎにアイレベル(≒水平線)を決めます。


2
コマから適度に離れた所で、真上からみた、自分が描きたい角度の四角を描きます。


こんな感じ。四角の角を、中心から伸びた縦線に合わせて下さい。(矢印)

四角の辺を延長して、アイレベルまで伸ばします。
アナログの場合、大きい三角定規かコピー用紙などを使うといいでしょう。

3
延長した線と水平線が交差した点が消失点になります。

これで、先に消失点が決まります。
中心線を基準に四角をおく」のがポイントです。




※この方法は、マンガパースというより製図的な方法です。漫画家、もしくはアシスタントで、こうやって消失点を決めている方は、あまりいないかとおもいます。
ではなぜ紹介したかというと、消失点の位置関係を理解するのに役に立つ知識だからです。
漫画の作画テクニックというより、パース感覚を掴むための理屈として覚えていただければと思います。

「適度に離れた位置に四角を」…と言われても、「適度ってどれくらい??」と思う方も多いでしょう。
これは、縦長でも横長でも大体同じくらいの距離で考える方法があるので、少し複雑ですが、説明します。


1
さっきと同様に、中心から縦横に十字線を引きます。


2
中心の縦線に角をあわせて、45度の角度で四角を置きます。

この時、四角の延長線が、「コマの角よりも少し下」になるようにしましょう。

3
これはコマのサイズに関わらず、大体一定の距離で大丈夫です。


4
最後に、横の中心線がアイレベルと重なる様に全体を動かします。


これで基準点が決まりました。あとは冒頭にもどって、ここを基準に好きな角度の四角を置けば消失点が決まります。


繰り返しになりますが、この方法で背景の消失点を決めている漫画家さんはあまり居ないと思います。
あくまで「消失点の位置関係」を理屈で理解するための説明です。
書籍「かんたん! マンガパース術」で、「二つの消失点が直角の位置関係にある事をイメージ」と書きましたが、理屈で理解したい方向けに書きました。

次回はこの続き、応用編の予定です。

2020年1月24日金曜日

初心者向け・背景パースのワンポイント動画

このブログは書籍「かんたん! マンガパース術」の続きで、初心者の次の段階へのステップアップとして書かれています。
なので、パース初心者の方には少し内容が難しいかと思います。

書籍のさわりを初心者向け動画として再編集してます。
(情報量としては動画三本=書籍の二割弱くらいです)

「一点透視は消失点が一つ、三点透視は消失点が三つ、くらいは分かっているけど、なぜか自然にならない…」という方には役立つかと思います。



一点透視編
ポイント
一点透視は奥行きを狭めにする

二点透視編
ポイント
二点透視は二つの消失点同士の距離。
45度の時が消失点同士が一番近く
斜めになるにつれて距離は離れる

三点透視編
ポイント
三点透視は「カメラがどれくらい上向きか(下向きか)」を
意識して、消失点とアイレベル(≒水平線)を決める



書籍では以下の17のポイントを、それぞれマンガ1P+図解ページ3Pで解説しています。

・消失点を決める前に
・一、二、三点透視の違い
・一点透視のポイント
・二点透視のポイント
・三点透視のポイント
・「何点透視」にするか
・消失点を増やす
・アイレベル
・パースに沿って半分にする
・同じ大きさのものを増やす
・坂、屋根などのパース
・パースに沿った円
・パースの圧縮を感覚でとらえる
・広角、望遠を理解しよう
・立体を意識した線を引く
・構成を考える
・魚眼パース

図解ページはこんな感じです。






2020年1月21日火曜日

画角(応用編) 画角でマンガパースを理解しよう

では、画角の知識をパースに生かしてみましょう






画角の話の続きです。

■1.画角と消失点の数の関係

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「かんたん! マンガパース術」で「基本的に立方体の消失点は、画面に一つだけ」というルールを紹介しました。

前回の画角の基礎を読んだ方は、ピンときた方もいるでしょう。

画角45度を標準として考えると、必然的に消失点は一つしか入りません。
絵に消失点が二つ以上入るためには、画角は90度以上必要です。
(これはレンズで言えば広角~超広角相当で、絵としては特殊な画角になります)


■2.画面と消失点の位置の話


画像7

これも「かんたん!~」で書きましたが、消失点の位置はまずラフを描いて、そこから決めるべきです。「コマ(フレーム)からこれくらい離れて…」といった決め方は、あまりよくありません。

そこをあえてコマ(フレーム)から自然な消失点の位置を考えてみると、大体したの様になります。図は消失点とコマ(フレーム)の関係がわかりやすい様、斜め45度から見た対象の構図です。

大雑把に言うと、消失点とコマ(フレーム)の位置関係は、コマが縦長か横長か、で変わります。

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コマが縦長でも横長でも、自然に見えるためには消失点同士が同程度に離れている必要があります。

縦長のコマは、消失点はフレームからかなり離れます(いわば横の画角が狭いわけです)。
対して横長のコマは、消失点はフレームに近づきます(横の画角が広い)。

仮に、真ん中のコマの絵を拡張してさらに横長のコマにしたい場合は、消失点を外側に動かす必要があります。(多分見た目ではわからないと思いますが、下の絵はパースに合わせて、真ん中の絵の線を引き直しています)

※これらはあくまで基本ルールです。ディフォルメなどの絵の表現として、あえて消失点が二つ入っている構図を描く等は自由です。



■「画角」は、漫画を描くにあたって必ずしも覚えなくても良いです

絵は、「見て手で描いて理解するタイプの人」と、「理屈で理解するタイプの人」がいると思います。(両方兼ねているのが理想かもしれませんが)

最初に書きましたが、絵を描くにあたって、「画角」は必ずしも必須の知識ではありません。実際、「かんたん! マンガパース術」では、画角という用語は使わず、考え方のポイントだけを書きました。
が、理屈で理解するタイプの人は、画角がわかるとパースのいろいろな疑問点の解決に役立つと思います。

画角(基礎編) 漫画家・アシスタントのための画角入門

「画角」って?

「画角」は、主にカメラなどで使われる言葉です。
背景を描くために必須の知識…ではありませんし、ちょっと難しいかもしれません。

ですが、理屈を理解できればパースの知識がより深くなります。
興味のある方はお読みいただければと思います。


人間の目はどれくらいの範囲が見えるか

画角の話の前に、まず人間の目で見える範囲の話から。
人間の視界(視野角)は、およそ横200度、縦125度(個人差あり)。
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「そんなに広いの?」と疑問に思う方には、簡単に確かめる方法があります。両耳を手で抑えて、少しずつ離して見て下さい。真横にある筈の手の小指辺りが、なんとなく見える筈です。


視野角全部を描こうとすると…

200度の範囲が見えるという事は、一つの道の両端(二つの消失点)が両方同時に見えるという事です。絵の中に無理矢理納めると、こんな感じ。
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これはいわゆる、「魚眼パース」の絵ですね。おそらく、ふだんこんな景色を見ているとは感じないでしょう。

その理由の一つとして、「人間の意識は視界の中心にある」ことが挙げられます。200度全部をはっきりとは見ていないのです。
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また実際には、中心以外の形や色は、実際には中心ほど鮮明に見えていません。そんな焦点の外側の、ぼんやりとみえている筈の荒い情報は脳が補完しているので、違和感を感じないのです。

この鮮明に見える部分、これが視野角の中で「人間が自然な形と感じる」範囲です



画角とは「画面がうつる範囲」の角度

視野角の話をふまえて、いよいよ画角の話です。
通常、写真を撮ると、現在見えている風景全ては写らないですよね。これは、人間が見える範囲(視野角)と、標準レンズの範囲(画角)に差があるためです。

下の図の、フレーム(レンズ)から覗いた緑の部分の角度、これが「画角」です
画像8

大体40~45度(※1)が標準的な画角のレンズとされます。
人間の視野角とくらべるとだいぶ狭く感じますが、切り取られた風景の画角としては、これぐらいが自然に見える範囲なのです。
つまりこの標準レンズの画角は、そのまま「肉眼に近い絵の画角」の基準として考えて良いでしょう。
(※ただし、「透視法で描かれた漫画の背景」にの場合は、普通の背景でも45度よりかなり画角が広くなる/狭くなります。これについては、別の記事で説明します)



広角、望遠の画角

観察者からフレームを前後に動かす事で、画角が変化します
観察者に近づけると広角の画角(60度以上)になり、遠ざけると望遠(30度以下)になるのです。※2
画像8
(上図で、画角が変化しても、フレームの大きさは変わらず、距離だけが変化する事に注目しましょう。この距離の違いが、レンズで言う「焦点距離」の違いです)


次は画角の応用編です。
(※1 レンズでは角度ではなく、焦点距離「24mm」「100mm」等の表記が一般的ですが、絵の画角の説明としては角度の方がわかりやすいので、角度で説明します。また、「標準レンズ」の規定は、メーカーなどによってまちまちです)
(※2 望遠、広角の定義も諸説ありますので、目安程度にお読みください)

書いた本など



ハウー本(かんたん! シリーズ)


シリーズ第二作。漫画背景などに必要なパース知識を、感覚的にわかりやすく説明しています。基礎から、実践的なテクニックまで幅広い情報を、コンパクトに読みやすくまとめました。




漫画形式でクリップスタジオの基本的な使い方から、プロでも役立つテクニックまでを紹介した本です。コマ割り、フキダシ、トーン等、基本的に漫画用途の機能説明がメインです。

百合漫画


六本腕の女将軍「アーシェラ」と、その秘書であるユニコーンサディの、恋愛未満の微妙な距離の駆け引きが続く話。オフィスラブで人外で百合。裸等の描写多め。※電子書籍のみ


「ゆいっち」と「内藤さん」の二人を中心に、女子中学校の演劇部の面々が繰り広げる群像劇。ほのかな百合。



(kindle以外の電子書籍、また上記以外の自費出版もありますので、「犬丸」「百合」、本のタイトル名、等で検索していただければ幸いです)

消失点を理屈で決める

パースで最初に悩むポイントの一つに、「 二点透視の二つの消失点をどこにするか 」があるかと思います。 消失点は、基本的には ラフを描いて、それを基準に決めます 。逆の、「ラフ→消失点」の順で、消失点から決めてしまうのはあまり良くない。 ですが、一応「消失点を先に決める」た...